高濃度カリウム製剤の病棟常備を廃止します!

医療事故の中では投薬エラーに起因する事故が最も多く、事故をなくすには、ミスが起きない、また、ミスがあっても患者さんに害が及ばないシステムづくりが急務の課題となっています。

医療の質安全向上のための病院共同改善プロジェクト(NDP)に参加している武蔵野赤十字病院(東京都),麻生飯塚病院(福岡県)、佐久総合病院(長野県)、神鋼加古川病院(兵庫県)、藤沢町民病院(岩手県)、水島中央病院(岡山県)は、病棟常備薬から高濃度カリウム製剤をなくすことを決定しました。

高濃度カリウム製剤は誤薬があれば死に直結する薬であり、病棟に常備することの潜在的危険を排除することが目的で、12月上旬から徹底をはかるとともに、これと並行して、指示の書き方や指示受け渡し手順の標準化、間違いやすい表示や剤形に関するメーカーへの改善要請、危険薬の扱いに関する職員教育、など「安全なシステム」作りを目指す取組みを進めます。

 

米国等の経験では、病棟保管薬から排除しても随時処方や低濃度カリウム液の活用により臨床上の問題を生じることがないことがわかっています。

他の病院でも同様の措置が取られること、また他の危険薬へも適用することを期待して、NDPでは2ヶ月間の影響調査を実施し、その結果を報告します。

対象薬: 塩化カリウム、アスパラK、コンクライトK、コンクライトP

 

 

(参考)

<投薬ミスを予防する −塩化カリウム−>

米国のJCAHO(医療機関評価合同委員会)が出したSentinel Event Alert の第1回勧告。

1998年2月27日第1号)


JCAHOはsentinel event policyを定めて、2年間に報告された200件以上のsentinel eventについて審査した。 その結果、もっとも頻繁に起こっているのは投薬のミスであり、そのうち塩化カリウム(KCL)の管理ミスで患者が死亡した10件について審査した所、8件は直接患者に注入されたことが原因となっていた。10件すべてについて、高濃度の塩化カリウム(KCL)が病棟で手に入るという事がその事故に関与していると確認された。また直接患者に注入されたミス8件のうち6件では、包装やラベルが似かよっているために塩化カリウム(KCL)が、ヘパリン、フロセミド(ラシックス)などと間違えられて発生した。「高濃度の塩化カリウム(KCL)の静脈注射事故による悲劇的な死亡を防ぐ方法は非常に簡単である。病院が全病棟で保管することを止めればよい。これによってある種のエラーは発生する事が不可能になる。」Lucian L. leape, M.D., Harvard Schoolof Public Health「残念なことであるが、医療の場では自分達の所で起こったことが無ければよそで起こった事にはかまわないという思いでいる人があまりにも多い。だからこそ、高濃度塩化カリウムのバイアルがいまだに患者を治療している場で見られるのである。」(Michael Cohen, MS, FASHP, President, Institute for Safe Medication Practices)

 

JCAHOとしては、適切な安全手段をとらない限り病院が高濃度KCLを薬局以外に置かないよう提言する。

 

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